日産アリアに搭載の『e-4orce』冬場と満充電付近は動作不能になる?

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日産から期待の新型車『アリア』が発表されました。

そのアリアの4WDモデルに搭載される前後モーターを巧みに操り異次元の運転フィーリングを出す『e-4orce』ですが、冬場や満充電付近では動かないのではないかと少し疑っています。

 

新型アリアに搭載の『e-4orce』とは?

新型『アリア』の4WDモデルのみに搭載される『e-4orce』ですが、これは前後2つのモーターを緻密に操る事でブレーキ時の重心移動を制御してしまおうという技術です。

『アリア』の場合はブレーキをかける際に1000分の1秒単位で前後の回生ブレーキ*量を制御し、ブレーキ時は通常は前のめりになる姿勢を極力フラットな乗り心地を実現するとの事です。

これはモーターだからこそ商品に出来る制御で、ABSやESCなど油圧式のメカブレーキを使う場合ではできません。なぜなら、ABS/ESC作動のメカニズムが『ECUが制御を送る⇒アクチュエーターが作動する⇒油圧が送られる⇒ローターがブレーキディスクを挟みだす⇒車輪に伝わる』ここまで多くの工程を得て制御が働くためどうしてもラグがあります。

一方でモーターの場合『ECUが制御を送る⇒モーターが制御する⇒車輪に伝わる』これだけです。しかもモーターから車輪までは一直線の棒で繋がっているのでますますラグはありません。

もし油圧式メカブレーキで実現しようとしても、ドライバーの反応に対して段付きで制御されているようなフィーリングになるため商品としては成立しません。

この回生ブレーキを制御によりe-4orceは普段の走行で不思議なドライブフィールを体感できるようになるのです。

ただし、回生ブレーキでは弱点もあります。

*回生ブレーキとは、車輪の回転エネルギーで発電してもらう技術です。簡単に言うと手回し式発電機と同じ原理で、ブレーキ時にモーターからバッテリー側に電気を流れるようにすると抵抗が生じてその分のエネルギーをバッテリーへ蓄えられます。

回生ブレーキを使うe-4orceの不安な所

回生ブレーキの利き具合はバッテリーへ送れる電力の上限量を超える事は出来ません。そのため、e-4orceは大量に電力を回収できる高速域からの強めブレーキでは作動ができないと考えられます。

また、一番気になるのはバッテリーが低温な時と満充電付近の時の挙動です。

低温になるとバッテリーの入出力性能が悪化するのが一般的です。

冬場になるとスマホの電池が速く減る現象と似ています。あれは、バッテリーの入出力特性が下がる事で、容量を推定するソフトが出力低下を電池残量の低下を誤認するためです。バッテリーの減りが速くなるのは出力側の話ですが、入力側も受け入れられる電力が減ります。

こうなると回生失効と呼ばれる回生ブレーキが効きにくい又は全く効かないという現象が起きてしまいます。

つまり、低温時ではe-4orceを作動させるのに重要な回生ブレーキがほとんど効かなくなる可能性があるのです。

また、満充電付近でも同じことが起きます。これはそもそもバッテリー側が電気を受け付けられない状況になっているため、回生ができない状況=回生ブレーキが効かない事になるのです。

回生協調でどんな時もブレーキは効きます。でもフィーリングは・・・

どんな状況下でも『回生協調ブレーキ』と呼ばれる回生ブレーキと通常の油圧式ブレーキの制動力を上手く調整して普段通りの制動距離で止まれるようには制御はされています。

満充電付近で急ブレーキを踏んでも、空充電状態と同じような制動距離で止まれるように設計はされています。

しかし、冒頭で述べた通りe-4orceの売りであるフラット制御は動作しなくなるのではないかとも考えています。

バッテリーの温度調節機能で温める機能があれば、低温時の作動は解決ですが、満充電付近は解決の方法が思いつきません。PHEVやe-Powerであれば、モーターでエンジンを回して回生できるだけの電力を使わせるという荒業がありますがEVでそれは出来ません。

ブレーキは命を握っている要素のため、そのフィーリング次第で運転時に安心できるか、不安になるか、心地よいか、不快で酔いやすいかを大きく決まると考えられます。

もし、車両の状況によってブレーキフィーリングが大きく変るようであればどれだけ魅力的な車であっても自分や同乗者の事を考えると買うのを躊躇してしまいます。

そのため、もし自分やこの記事を読まれた方の中でアリアを近々試乗できるタイミングがあれば是非確認してみたい所です。