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EV車を購入予定?EVの時代は当分来ないので一緒に冷静に考えましょう

欧州で企業平均燃費規制が導入されるのに先立ち、日本メーカーではマツダが『MX-30』、ホンダが『e-Honda』と呼ばれる初の電気自動車(EV*)を発表しました。海外メーカーではフォルクスワーゲンが『ID.3』と言われるSUV型EVを発表し、今年中には日産がリーフに次ぐEVである『アリア』を世界各国で発売される予定です。これらの動きを通じて自動車評論家の方々は「EV時代が到来」という記事を書きそうですので、先に自動車関係の人間として書いておきます。そんな時代はまだまだ来ませんと。

*EV=Electric Vehicleの略

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 メーカーがEVを盛り上げる理由とEVが抱える問題点について

各メーカーがEVを大々的に発表・発売を行うのにはEV市場でシェアを獲得したいという積極的な理由ではなく、「 罰金を払いたくない」というのが主な理由です。

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過去の記事で日産がキャッシュカイにPHEVを搭載するのは罰金回避が目的で最大限効果が出そうな欧州限定発売されそうだと書きましたが、EVを積極的に売り出すのはPHアプローチが違うだけで罰金回避という目的はどこのメーカーも同じです。

メーカーの魂胆からして買う気が少し失せてしまいそうなEVですが、ユーザーにとっても『今買う』メリットはゼロと言っていいでしょう。

ハードウェアの進化がまだまだ途中

EVという分野が盛り上がり始めたのは2010年代からで、まだ10年にも満たない市場です。そのため、車側ではバッテリーの総合的な性能の向上、インフラ面では充電設備規格の乱立や進化をしている最中です。

特にインフラ側では、急速充電規格は以下の画像のように乱立している状態です。

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そんな急速充電器ですが、日本で主流のCHADeMoに絞っても最高出力が従来の50kwから100kwまで対応した規格に進化していたり、CHADeMoの次世代規格ChaoJiが2020年末にリリースされる予定であったりまだ過渡期と言わざる得ない状態です。(ChaoJiではCHADeMoの9倍である900kwの出力に対応します)

このように数年で大幅な機能向上や規格の淘汰と誕生したりと進化のスピードが非常に速いのが電気自動車の特徴でもありデメリットでもあります。

なぜなら、新車を買って5年目を迎える頃には自分の車と新型の車でバッテリー性能は大幅に変わってしまっていたり、最新鋭のインフラに対応できていないなど下取り価格に大きな影響を及ぼしそうな要素が非常に多くなってきます。

長すぎる充電時間

現在市販されている車は30分充電をしなければ実用的な距離を出せません。

例えば航続距離が458kmの日産リーフe+では100kw対応の急速充電気で充電しても25%⇒80%まで約30分かかります。これはベストコンディションでの充電ですので通常であれば60分です。

60分なら余裕で待てると言う方なら不自由に感じませんが、週末のドライブで60分余分に取られてしまうのはかなりストレスフルに感じる方も多いかもしれません。

ただ、進化が速いEVですので充電性能が向上して10分の充電で200km程度は走れるようになる時代が来るかもしれませんが・・・現実は甘くありません。

技術進歩にインフラは付いて来れない

今では大きめのパーキングエリアには急速充電器が備わっている事が多いです。しかし、その充電器のほとんどが従来型である出力50kw以下しか対応していないものになっています。

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急速充電器の設置状況(高速PAのみで100kwも含まれます)

では、その中で出力50kw以上を出せる最新型充電器がどの程度あるのかというと・・・

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最新型である50kw以上の急速充電器(高速PAのみ)

名神、東名の上下合わせてたった4台です。

量産型EVであるi-Mievやリーフが2012年に発売されて8年という長い年月をかけて多くの急速充電器が整備されました。政府もEV先進国を目指していたのか、公共性があれば急速充電器の設置費用の内3/2を政府が助成してくれていました。

ただし、いくら補助金がもらえるとは言え従来型と言われている出力50kw以下の機器でも約500万円、出力50kw以上の機器は恐らく700万円以上の導入費用がかかります。このまま補助金が続いても最新型を導入しようとすると230万円近い費用がかかります。これに年100万円以上の高圧受電契約やメンテナンス代を考えると、いくら補助金があっても一度設置された充電器が寿命を迎える前に最新型へ更新する事業者が現れるとは考えられません。そうなると設備更新までは本体の寿命である10年近い時間がかかるものと考えられます。

つまり、技術進歩で充電時間が大きく短縮できる急速充電器が世に出ても、日本は既に急速充電器が整備されてしまっているため最新型に更新されるのには短くて数年間、長くて10年程度は待たないと使えないという状況になってしまいます。

車両価格が高すぎる

結局はお金です。

電気自動車のカタログ値458km走れるリーフe+は441万円(最安グレード)、332km走れるリーフでは389万円(最安グレード)します。

この金額であれば後述する補助金を合わせても欧州メーカーであるAudiのコンパクトSUV、Q2(約320万円~)が買えてしまいます。

また同じクラスや内装の車であれば日産KICS e-Power(約280万円~)が買えてしまうため補助金を積まれても、燃料代*がかからないと言われても価格優位性は一切ありません。

*年間1万キロ走行、ガソリン150円、燃費18km/Lの場合=約8.3万円(19年乗ればリーフを買ってもペイできます)

EVを買うメリットはズブズブの補助金

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マイナスな事ばかり書きましたが、EV車を買うメリットももちろんあります。

それは、国からの補助金に期待できる事です。日本を例に挙げると現在、EV車を買うと大体40万円の補助金が支払われ、市町村によっては追加で補助金を受け取れたり、自動車税が数年間免税になるなど特典は多くあります。

補助金と自動車税の免税を合わせると少なくとも約57万円*程度のお金が浮きます。車購入時に40万円が振り込まれ、年に3万円を5年間も払わなくてよいというのはかなりお得と考えられます。

ただ、この補助金はアウトランダーPHEVやRAV4 PHV、プリウスPHVなどのプラグインハイブリッド車でも22万円貰えます。しかもEVと同じく都道府県によっては自動車税が5年間免除です。PHEVの利便性を考えると多少補助金額が減ってもPHEVを選ぶという選択肢が大いに出てきます・・・

*補助金40万円+自動車税5年間免除(2.9万x5年=14.7万円)+重量税免除(2万)=56.7万円

結局、EVの時代はゆっくりとしか来ない

欧州を中心にEV車へのシフトを促す法規制や補助金を多く導入するものの、ユーザーにはまだまだメリットが少ないのが現状です。恐らくコロナショックで自動車業界が大きく冷え込む中、先進国各国は自動車業界救済という名目でEVへの補助金をさらに充実させることも考えられます。

ただこの救済はずっと続くはずもなく、2年程度で補助金は途切れ、その瞬間から多くの人はEVよりデメリットが少ないガソリン車やHV車を買うと考えられます。また、メーカー各社はユーザーがEV車を買うのが補助金目当と分かっているため多種多様な車の開発は行われません。なぜならEVは開発費や生産コストが多く掛かる割りに、政府の補助金の動向で成否が決まるためです。

また、ユーザー目線で話すと、いくら400km走れますと言われてもエアコンや走り方で大きく航続距離が変わるためバッテリー残量に気を使わなければいけないのは変わりません。また、気軽に給油と言う訳にはいかず、1回につき30分~1時間を充電に取られてしまうのは不自由に感じます。その割に車の価格は高いと良いことなし・・・

ですので、EVの時代が来るのはここで挙げた技術的な課題とインフラ課題が解決される必要があるため、最低でも20年以上かかるのではと思っています。ただ、技術的なブレークスルーがあれば10年程度で新車販売の半分はEVという時代も来るとも考えられるのでEVはまだ買わないけど今後も目が離せない話題ではあります。

もし大きな動向があればここでも取り上げていきます。